episode60感嘆符
人はびっくりした時や予想外のことが起きた時などに驚きの声を発します。
「あっ!」とか「わっ!」とか、誰でも一度は発したことがあるはずです。
でもその声は、決して誰かに向けて発しているわけではないでしょう。
無意識のうちにでてしまうというか、あえて言うなら自分に向けていっているのかもしれません。
また出来事の大きさや衝撃度などによって、その声の大きさも変わるはずです。
例えば、食事中にご飯粒がポロッと落ちてしまったからといって、周囲の人がびっくりするほど大きな声を発することはありません。
せいぜい小さく「あっ…」という程度でしょう。
しかし妻にこのような概念は当てはまりません。
ごく些細なことで、周囲に響き渡るほど大きな声で「あ“~!!!」とか「もうっ!!!」、などの大きな声を上げるのです。
その声を聞くと、一体何が起こったのかとびっくりしてしまいますが、実はたいしたことがないのです。
例えば食事中に何かをこぼしてしまったとか、ティッシュがなくなってしまったとかです。
普通の人ならせいぜい「ぁ…」ぐらいか、もしくは声を発することも無いような些細なことです。
私が初めて妻の感嘆符が幾つも付いた叫び声を聞いた時、いったい何が起きたのか、びっくりして妻のもとに飛んでいきましたが、たいしたことではなかった記憶があります。
そのうち妻の感嘆符を聞いてもびっくりしなくなり、また叫んでる…と思い、妻のもとに駆け寄ることをしなくなりました。
そんなことが何度か続いたある日のことです。
その日、私は忙しくて、妻と食事のタイミングが合わず、私が仕事をしている時に妻は食事をしていました。
すると突然、妻の「あ“~!!!」という声がしてきました。
私が聞き流して仕事を続けていると、妻が部屋の扉を開け、「私が叫んでいるの、聞こえてるでしょ!!!」と顔を真っ赤にして怒っています。
さらには、「どうして知らん顔ができるの!!!」、「私のことが心配じゃないの!!!」とまでいい出しました。
私はびっくりして謝りましたが、妻の怒りを鎮めるのは大変でした。
やっとのことで落ち着いた妻に何があったのか聞いてみると、食事をしていたリビングにコバエが飛んでいたということのようでした…。
このこと以来、私は妻の感嘆符が付いた叫びが聞こえてくると、ともかく妻のもとへ駆けつけ、「どうしたの?!」と聞くことを習慣にしました…。
もちろん、今まで一度も大したことは起きていません。
こんなにも私のことを頼りにし、常に私の助けを求めてくれる…
こんなか弱い妻が大好きです…。