episode31地震
妻と私は現在、別々の部屋で仕事をしています。
妻は二階の広い洋間で、私は一階の狭い和室です。
ですが以前は二人とも一階で仕事をしていました。
ただし妻は広いリビング、私は狭い和室という力関係はその頃も同じです。
リビングと和室は隣同士なので、声を掛けるとすぐに話ができます。
その頃の仕事は、私から妻に相談することが多かったのですが、話しかけると妻はすぐに不機嫌になり「仕事の邪魔しないで!」と怒っていました。
結局妻の発案で、二階と一階に分かれて仕事をするようになりました。
そのうち一階で仕事をしていると、二階から響いてくる音で妻の様子が何となく分かるようになりました。
あ、この音はイライラして椅子をガタガタさせてる
この音はコーヒーのカップをテーブルに置いた音
このキーを叩く音は仕事が好調な証拠
など、音で色んな事が分かるようになりました。
ある日のことです。
その日は夕方に妻が些細なことで怒りだし、その後、自室にこもって怒りながら仕事をしていました。
怒っていることは二階から伝わってくる音で何となく分かりました。
はぁ…どうしようかなぁ…。
どうしたら機嫌直してくれるんだろう…って悩んでいた時です。
突然地震が起きました。
それほど大きな地震ではなかったのですが、ちょっと長めに揺れていました。
一階にいる私にはそれほどびっくりするほどの地震ではないように感じました。
揺れている最中、二階からガタガタッと大きな音が響いてきました。
聞き慣れない音で、妻がどんな行動をしているのか全く想像できません。
不思議に思って、二階に上がり、恐る恐る妻の部屋の扉をそっと開けてみました。
すると、妻の姿がデスクに見当たりません。
おまけに椅子がデスクから大きく離れて部屋の壁にまで移動しています。
びっくりして部屋を見回すと、妻はオドオドした表情でベッドに座っていました。
私はびっくりして「どうしたの?」って聞くと
「地震…」
「今、揺れたでしょ?」
「長く揺れてたから怖かったの…」
「もう大丈夫…?」って聞いてきます。
そう、妻は地震が苦手な人だったのです。
しかも二階は一階より大きく揺れたんでしょう。
あんなに顔を真っ赤にして怒っていたのに、今はもうそれどころじゃないようです。
「怖いからちょっと休憩…」と、リビングに降りてきてスイーツを食べているうちに落ち着いてきたようでした。
妻にも弱点はあったのです。
だからと言って、地震が起きた時、妻の様子を見に行かなかったらどうなったでしょう…。
おそらくそれはまた怒らせる原因にもなったはずです…。
「どうして見に来ないのよ!!」
「私のことが心配じゃないの?!」
って…。
でも…
一応弱点も持っている…
こんな妻のことが大好きです。。。