episode8しらたきソバ
妻はあまり料理が得意ではありません。
ですが、今のように私が作ったり、総菜を買いに行ったりする前は、
妻も時々…ホントに時々…作ってくれていました。
今となっては懐かしい思い出ですが…。
そんな妻の名料理のことを思い出しました。
それは、私が忙しく、妻がのんびりできていた時だったと思います。
その頃の私は、営業的な動きをしており、
日中は自宅にあまりいることがありませんでした。
夕食を食べている時、美味しいものを食べたいよねって話になり、
今度どっかに美味しいものを食べに行こうって話していました。
そんな時、妻が「じゃあ私が作ってあげるよ!」って。
「そんなぁ…いいよぉ」って言うものの、
心の中ではうれしい気持ちがいっぱいの私です。
妻も「大丈夫よ、任せておいて!」「何が食べたい?」
って聞くものですから、
「じゃあ肉じゃが!」ってリクエストしました。
妻はしばらく考えて…
「わかった! じゃあ明日の夜食べさせてあげるから」って言ってくれました。
この時の、妻がしばらく考えていた時間の意味を察知すべきでした…。
次の日の夜です。
「ただいまぁ」って帰ると、妻が台所でなにやら料理しています。
「お帰り、ちょっと待っててね。もうすぐできるから」っていっぱいの笑顔。
こういう時の私はダメです…笑顔に翻弄されてしまいます。
さあ、いよいよ食事です。
私は待望の肉じゃがが食べられると思って、テーブルに着いていると
なにやらスパゲティのような、おそばのようなものが盛り付けられて出てきました。
妻曰く、
「しらたきって、パックにいっぱい入ってるのね」
「余ったらもったいないから、全部入れちゃったよ」
そっかぁ…。
しらたきがいっぱい入ってるんだって思って食べ始めると…
しらたきが全く切られていません。
全部つながってるんです。
それに、じゃがいもや肉がしらたきに埋もれています。
これじゃあまるで、しらたきソバです。
「しらたき、切らなかったの?」って聞くと、
「どうして切らなきゃいけないの?」とのこと。
妻は、しらたきって、短い状態で入っているものだと思っていたようです。
でも、せっかく一生懸命作ってくれたんだからって思って食べますが、
まるで「そば」か「うどん」のようにすするしかありません。
味も薄いのですが、妻曰く「味は薄めにした。薄味で美味しいでしょ?」
「いっぱい食べてね」って…。
ここまでなら、料理が苦手な奥さんによくある話です。
妻が凄いのは、
私のために作ったからと、自分はちょっと食べただけで、
鍋に残ったしらたきソバを全部私に食べさせるところです。
反論は絶対に許さない雰囲気が顔からオーラのように出ていました…。
それ以来、私は肉じゃがが嫌いになり、
料理は私が担当するようになりました。
でも…
私の好物を作って、私一人に食べさせてくれる…
こんな妻のことが、私は大好きです。。。