episode13コーヒーショップ
妻と私は同じプロジェクトの仕事をすることもありますが、
基本的には別々に仕事をしています。
仕事では打合せもあるため、外出しなくてはならないのですが、
お互いずっと家で仕事をしているとストレスも溜まるので、
たまの打合せは厄介ですが外出自体が楽しみでもあります。
ある時、妻が仕事の打合せに行くことになりました。
聞くと、二人とも行ったことのない場所です。
たまには一緒に電車で出掛けて、
帰りにちょっと美味しいものでも食べて帰ろうってことになりました。
私は打合せに参加しませんので、
打合せが終わる時間にコーヒーショップで待ち合わせにしました。
妻が打合せに行っている間、一人で時間を潰すのが退屈で、
早めに待ち合わせのコーヒーショップに入り、
美味しいコーヒーをゆっくりと味わいながら小説を読んで待っていました。
店内には私以外に二組の年配の女性しかいませんでしたので、
静かな時間がゆっくりと流れていました。
そんな時、妻が打合せから戻ってきました。
打合せが上手く進んだようで、やたらハイテンションで店内に入ってきました。
そしてそのテンションのまま…
「終わったよ!」
「何飲んでるの?! コーヒー?!」
「私もコーヒー飲もうかな!」
「お腹も空いてきたから、何か食べようかな!!!」
って大きな声でしゃべり始めました。
それまでの穏やかな時間が一転しました。
そしてコーヒーと小さな菓子パンを買って戻ってきた妻は、また大きな声で
「何して待ってたの?!」
「ずっとここにいたの?!」
「そのコーヒーは何杯目?!」
としゃべり続けます。
そのうち、聞いてもいないのに打合せの様子を大きな声で話し始めました。
私は店内の他のお客さんに気を遣って、
小声で「もう少し小さな声で話そうよ…声が大きすぎるよ…」と言いましたが、
すっかりテンションの上がってしまっている妻は気にしていません。
そのうち…
パンを食べながら話していたせいか、
妻の口からパン屑が飛び出し、私の方へ飛んできました。
それも一直線に私のコーヒーカップめがけて…。
慌ててコーヒーカップを持ち、もう片方の手でカップにパン屑が入らないよう
覆いを作りながら身体を横向けます。
パン屑が一直線に飛んだ様子と、私の慌てる姿が面白かったのか、
妻の笑い声が静かな店内に響き渡りました。
妻が大騒ぎしながらコーヒーとパンを食べ終わった頃には、
店内には誰もいなくなっていました…。
でも、
私の顔を見てパン屑を飛ばすほど笑ってくれる、
こんな妻のことが大好きです。。。