episode17セロリ
妻は多くの女性と同じように、何度もダイエットに取り組んでいます。
私が知っている限りでも、話題になったダイエットは全部やってるはずです。
一時、炭水化物を取らないダイエットが流行りました。
ご存知の方も多いと思います。
妻もやっぱりやっていましたが、炭水化物の代りに何で満腹にするかが問題です。
その時は徹底的に鍋料理でした。
野菜に鶏肉や牛肉、魚などを入れた鍋だけを大量に食べていました。
ごはんを炊いても私しか食べないのも面倒だし、私も一緒に鍋ダイエットをさせられる羽目になりました。
あ…鍋は、ほとんど私が作らなければならなかったんですが…。
でも、いつも鍋ではさすがに飽きてきます。
鍋の中身や味付けを色々変えてみるんですが、野菜と肉類って基本パターンは変わりません。
「何だか飽きてきたね」って言うと、
「そうかな? 私はそうでもないよ」
とは言うものの、妻も正直なところ、飽きているのがありありと分かります。
きっと自分のダイエットのためだからって思って辛抱していたんでしょう。
そんなある日、私が家に帰ろうと、その当時住んでいた高層マンションのエレベーターを降りると、どこかの部屋で漢方薬でも煎じているのか、強烈な匂いが漂ってきました。
思わず鼻を摘まみたくなるような強烈な匂いです。
すごい匂いだなぁって思いながら自宅の部屋に向かうと、ますます匂いが強烈になってきます。
これはきっと、隣の部屋の女性が漢方薬でも煎じてるんだろう…。
迷惑だなぁって思っていました…。
そして部屋の扉を開けると、途端に目も開けていられないほど強烈な匂いが襲ってきました。
部屋中に匂いが充満しています。
「た…ただいま…」
「どうしたの、この匂い」って叫ぶと、妻が玄関まで飛び出してきて、
「セロリを煮てるのよ、鍋に入れようと思って」って言うではないですか…。
さすがにこの匂いには耐えられず、すぐに鍋の火を止め、窓を全開にしました。
「なんでセロリなんか入れるの?」って聞くと、
「だって、いつも同じ野菜ばっかりじゃ飽きるって言ってたじゃない!」
「セロリを入れたらきっと美味しいって思って作ってあげてるのよ!」
「あなたのことを考えて作ってあげてるんだから!」
と顔を真っ赤にして怒鳴ります。
でもさすがにこの匂いには妻も参っていたようで、
「セロリを煮ても美味しくないから、やめようよ…」
「私が作るから…」って言うと、
「せっかくセロリ、買ってきたのに…」とトーンダウンしました。
その日も結局私が鍋を作りましたが、
妻は気恥ずかしかったのか、一言も話さず、もくもくと鍋を食べていました…。
皆さん、セロリは決して煮てはいけません。
近所迷惑です…。
そして二・三日は匂いが取れません…。
でも…
私のために新しい鍋に挑戦してくれる、
こんな妻のことが大好きです。。。