episode18ブロック崩し
妻と私はお互いの休みが重なる時、旅行に行くことがあります。
別に豪勢な旅行ってわけではないんですが、普段忙しいので、たまにはのんびりしようって意味合いの旅行です。
少し前の話ですが、ある年の冬、妻と一緒に温泉地へ旅行に行ったことがありました。
有名な温泉地でなく、山間にあるひなびた温泉をわざわざ探しました。
その年は非常に寒く、何度も雪が降ったので、きっと雪が積もっているはずです。
雪道の運転に慣れていない私はちょっと不安でしたが、妻がどうしても車で行きたいというので、しょうがなく車で行きました。
案の定、途中からガンガン雪が降ってきます。
さすが豪雪地帯って感じの降りかたで、私は景色を楽しむ余裕など全くありません。
運転に必死です。
途中の街中でも歩道の縁石に乗り上げたり、溝に落ちたりして身動きできなくなった車を何台も見かけました。
その度に緊張したのを覚えています。
やっとのことで温泉に着き、ホッとして部屋に入ると、ひなびた温泉地だけあって古めかしい部屋です。
しかも懐かしいゲーム「ブロック崩し」が置いてあります。
昔のゲームセンターに置いてあったような形のもので、お金を入れなくてもできるようになっていました。
それを見た妻は、着替えもせず、いきなりブロック崩しをやり始めます。
私は運転で疲れてるのに、一人できゃあきゃあ言いながらゲームに夢中です。
ゲームは一人でしかプレイできないタイプのようで、二人で対戦などはできません。
私は疲れていたので、ともかく温泉に入りたく、なんとか妻をなだめました。
そして温泉から出て、食事の前にブロック崩し。
食事を食べ終わるとすぐにブロック崩しです。
私はあまりにも退屈だったので、ちょっとだけやらせてもらいましたが、すぐにゲームオーバーになってしまいます。
その途端、今度は妻が延々と独占します。
部屋には布団が敷かれており、退屈な私は布団の中からゲームの様子を見るしかありません。
せっかくの旅行なのにそのまま寝てしまうと、一体何しにこんな所まで来たんだってことになるので、頑張って起きているつもりでした。
ですが寒いし、運転にも疲れていたので、すぐに寝てしまったようでした。
しばらくして気が付くと、妻がまだブロック崩しをやっています。
時計を見ると、もう朝方…。
「何やってるの!」
「早く布団に入らないと風邪ひくよ!」
「いいかげんゲームやめようよ!」って言うと、
「いいでしょ! 面白いんだから!」
「ゲームぐらい好きにやらせてよ!!」
「あなたは寝てればいいのよ!!」
と顔を真っ赤にして怒り、その顔色のままゲームを黙々と続けていました。
結局朝までゲームを続けていたようで、翌日の車中ではひたすら寝ていました。
妻は山奥の温泉にブロック崩しをしに行き、私はただそれを見るために雪道を運転した旅行でした…。
でも…
たまの休みに温泉地に行った時ぐらいはゆっくり寝かせてくれる…
こんな妻のことが大好きです。。。