episode25お尋ね者
妻は怒るといつも顔が真っ赤になります。
その赤さの度合いが怒りの度合いを計る目安でもあるのですが、時にその目安を誤る時があります。
それは妻の表情です。
いつもと同じ表情ならこの位の怒りなんだなって分かるのですが、表情が異なるともう予測不能です。
正直、どう対処すれば良いのか…。
表情と説明しても、分かりませんよね…。
もっと詳しくお話しします。
実は、妻の寝ぐせなんです。
普通寝ぐせって、髪が跳ねてしまっている状態などを言いますが、妻の場合は髪ではありません。
顔にくっきりと筋が付いてしまうんです。
この寝ぐせは場所の違いや程度の差はあっても、ほぼ毎日顔のどこかに付いています。
ある時はちょうど片目の上にまるで刀キズのようにくっきり入ってました。
まるで…時代劇に出てくる「お尋ね者」か「人切り○○○」のようです。
そんな顔で怒られても、どうリアクションしていいのか分からなくなります。
そのお尋ね者の表情になった日は、一緒に買い物に出掛ける日でした。
朝起きてきた妻の顔を見て、私は吹き出しました。
いつもにも増してお尋ね者っぽいんですから。
最初は妻もすごいよねって笑っていましたが、出掛ける時間が近づいてきても付いた筋は消えそうにありません。
時間が迫ってきたので「出掛けようよ」って言うと…
「こんな顔でどうして出掛けるのよ!」って返事。
私はここで表情を見誤りました。
怒っていたにも関わらず、私はそれほど怒っていないって思ってしまったのです。
妻が半分冗談っぽく言ったと勘違いしてしまい、
「大丈夫だよ。行こう。」って言ってしまったのです。
決して本気ではなかったのですが…。
だって…最初からずっと怖い表情だったから…分からなくて…
つい…冗談を…。
その途端、妻の声は怒号に変わりました。
「嫌だって言ってるのが分からないの?!」
「こんな顔で外に出るのが嫌って気持ち、分からない?!」
「どうしてそんな無神経な事を言えるの?!」
「あなた、最低よね!!」
やってしまいました…。
それまで笑いの対象だった寝ぐせが、一瞬にして恐怖の対象に変わりました。
迫力満点です…。
結局、その日はどこへも出かけられませんでした。
私は買い物に行き、妻の好物をたくさん買ってきました。
機嫌を直してもらえればって思って…。
妻の怒りは夜まで続き、食後のスイーツでやっと機嫌を直してもらえました…。
でも…
お尋ね者になるほど大胆なポーズで寝てしまう…
こんな妻のことが大好きです。。。