episode27ハブラ?
妻は家の中では絶対的な権力者です。
ところが一歩外に出ると、そんなに怒るなんて信じられないって言われるほどおしとやかで優しそうな女性に変貌します。
私がいくら友人に妻の恐さを説明しても絶対に信じてもらえない理由がここにあります。
ですが…
そのおしとやかで優しそうな女性像は長く続きません。
すぐにボロが出てしまいます。
最初だけなんです、優しそうなのは…。
今の家に引っ越してきた当初、隣人はきっと優しそうな奥さんって思ったでしょう。
ですが何年か住んでいるうちに、何度も夜中に妻の怒声が聞こえてきたはずです。
今頃は印象も変わったんではないでしょうか…。
また妻は、時々一緒に行くスーパーや薬局の店員さんに対しても、最初はすごくおとなしそうに話します。
妻と一緒に薬局に行った時のことです。
顔に浮いた脂を取る、油取り紙が無くなったとのことでした。
妻は列におしとやかに並んでいます。
前の人のレジが終わり、妻の番が来ました。
「あのう…油取り紙はありますか…?」
前のお客さんの話し声と明らかに違う、まるで消え入りそうな小さな声です。
レジの店員さんは聞こえなかったようで、
「え? なんですか?」って。
すると妻はまた消え入りそうな声で 「油取り紙です…」。
店員さんははっきり聞き取れなかったようで、
「ハブラ?」って聞き返しました。
今考えると、もう少し大きな声で話してくださいって意識が働いたようで、わざと大きな声で聞き返してきました。
妻はそれにカチンときたようでした。
隣に立っている私にも、一瞬にして妻の顔が紅潮したのが分かります。
そして「油取り紙!!」と大きな声で答える妻…。
店員さんはその大きな声にびっくりしたようで、慌てて棚から油取り紙を取り出します。
そして恐縮したように小さな声で 「これでよろしいですか…?」
「はい!」
とまた大きな声で答える妻でした。
薬局を出ると、
「何度もちゃんと油取り紙って言ってるのに! もう!」
「あんなに何度も言わせるって、おかしいよね?!」
「そうでしょ?!」
と、私に文句と自分の正当性を強要してきます。
その後、妻はずっと機嫌が悪く、機嫌を直してもらうのに大変でした。
ご近所の皆さん…
どうか妻を怒らせないでください…。
おしとやかにしている内に物事を穏便に終わらせてください…。
でなければ、私が被害を受けるんです…。
でも…
どこへ行っても最初は一応もじもじとしてしまう…
こんな妻のことが大好きです。。。