episode42横断歩道
妻は普段ちょっと天然かと思うほどの人です。
そんなこと知らないの?とか、
何言ってるの?
って思ってしまうようなことを無警戒に話すので、余計そう思ってしまいます。
初めて妻に会った人はそんな様子を見て、可愛い人ですねって言うんですが、実はそれは妻の一部でしかありません。
妻の別の顔は、妻の仕事やプライドが少しでも傷つけられそうになると一気に現れます。
実際に傷つけられるのではなく、少しでも傷つけられそうだって妻が感じるだけで変わってしまいます。
今までニコニコ笑っていたのが、一瞬にして顔を真っ赤にして、まるで別人のように豹変します。
その変化の大きさには長年一緒にいる私でもびっくりさせられますが、特に妻のことを知らない人は本当に驚いてしまうようです。
そのため私は仕事に関することなどはなるべく家以外では話さないようにしています。
私に否定するつもりが全くなくても、妻がそう感じただけで豹変してしまいますし、外出先で豹変されると困ってしまうからです。
もちろん妻のプライドを傷つけるようなことは言いませんし、そんなことは夢にも思ってもいないのですが…。
以前、妻と一緒に繁華街を歩いていた時のことです。
仕事のちょっとしたことで言い合いになってしまいました。
それは妻の話し方にも問題があり、
少し「見た」だけのことを、さも全部知っているように私に話したからです。
その仕事は私も知っており、妻が言っていることは私の知識と違うって思ったことから言い合いになってしまったのです。
人通りの多い繁華街ですから、自宅にいる時のように話せません。
万が一、こんな場所で怒らせてしまったら大変です。
なるべく怒らせないようにしないとと思い、私が折れて話を終わらせようとしました…
ですが妻は気に入らないようで、しつこく同じ話題を口にします。
しかも私が話題を変えようとしたことが火に油を注いでしまったようです。
もう自宅にいる時のように顔が真っ赤です。
こりゃあ話題を変えるわけにもいきません。
そこで私は、妻が「見た」って言っていることを「本当に見たの?」って、怒るでもなく普通に聞いたんです。
私にすると追求する口調ではなく、ごく自然に聞いたのですが、これで妻が爆発したようです。
妻が爆発したのはちょうど横断歩道を渡っていた時でした。
妻は横断歩道の真ん中で仁王立ちになり、大きな声で「見たのよ!!」と叫びます。
横断歩道の真ん中ですから、信号待ちの車がこちらを向いて停まっています。
横断歩道も大勢の人が歩いています。
妻は気付いていなかったでしょうが、周囲の人たちは何事かと見ているし、信号待ちしている車のドライバーからの視線も感じました。
私はひたすら妻に謝り、横断歩道の真ん中から動いてもらいました…。
その後、機嫌を直してもらうのが大変でした。
今後は二度と妻を外出先で怒らせまいと決意を新たにした私でした。
でも…
普段の天然ぶりが可愛い…
こんな妻のことが大好きです。。。