episode44ホッケ
妻は料理が苦手です。
というよりも、ほとんどできません。
本人の弁ではしないだけで、やると上手いって主張しますが、事実は全く違います。
料理をしてもらうと、何でも大騒動になってしまいます。
台所から悲鳴とも叫び声とも分からない大きな声と騒音が響いてくるのですから、とても美味しい料理を心待ちにするって気分になれません。
私としても、大騒動で料理をしてもらうより、私がオーソドックスなものを作る方が早くて美味しいし、心穏やかに過ごすことができます。
そのため、料理は私がやらなくてはいけない羽目になっています
それは妻の料理への腕前を上げることにならないのは良く分かっていますが、それよりも穏やかな日々が欲しいです。
先日のことです。
私は睡眠不足で仕事をこなしており、やっと夜8時頃にひと段落しました。
もちろん、昼間のうちに仕事の時間を割いて買い物は済ませてあります。
夕食はホッケを焼くつもりでした。
忙しいので手のかかる料理ではなく、簡単にできるものをと考えた結果です。
なので、ホッケ以外には冷奴やみそ汁などで、手早くできるものを買い揃えました。
仕事がひと段落して落ち着くと、急に眠気が襲ってきました。
妻も私もお昼を遅めに食べたので、お腹が空く時間にはまだ間があります。
夕飯の準備をするまで一時間半ほどあります。
少しだけ横になろうと思って、そのことを妻にいうため、仕事部屋に行きました。
「ひと段落したし、夕飯まで時間があるから、少しだけ寝るね」
「一時間ほどで起きるから」というと、
「今日の夕飯は何なの?」
「今日はホッケと冷奴だよ」
「え!!!」
「あなた、今から寝たらきっと起きないでしょ?!」
「私、魚なんか焼けないわよ!!」
「どうすればいいのよ?!!」
「食事できないじゃない!!」
「お腹が空いて我慢できなかったら叩き起こすわよ!」
と顔を真っ赤にして怒りながら文句をいいます。
「大丈夫、ちゃんと起きるから…」となだめて少しだけ横になりました。
一時間ほどウトウトしてからちゃんと起き、ホッケを焼いて食事の用意をしました。
私がちゃんと時間通りに起きて食事の用意をしたからでしょうか、妻は機嫌よくホッケを食べていました。
妻が機嫌良さそうなので、思い切って疑問をぶつけてみました。
「魚を焼くのって簡単だけど、できないの?」
すると「そんなの出来るわけないでしょ! やったことないし!」
「でも、できないからって、どうして怒って文句いうの?」
「そんなに怒ってないでしょ」
「私、魚を焼くなんてできない~っていっただけじゃない」
「あんなに可愛くいったのに、あなたには怒ってるように見えたの?」
「あなた感覚が歪んでるわよ」と、さも普通のようにいいます。
あの真っ赤な顔で文句をいう姿が可愛いって、私には理解できません…。
やっぱり私の感覚が歪んでいるのか…。
あの姿を見て可愛いって思うべきなんでしょうか…。
でも…
自分の言動を全く違うものに美化できる…
こんな妻のことが大好きです。。。