episode57女心と秋の空
妻は非常に頭の良い女性です。
記憶力も良く、私が以前話したことなどもしっかり覚えています。
そのため、私が話すことが以前話したことと矛盾がある場合、「あなた、前はこういったでしょ。あれは何だったのよ!」ととがめられます。
私にするとその時とは状況が微妙に違うので、結論が違うのだと説明しようとするのですが、怒涛のような文句の嵐に言い返せなくなってしまい、叩きのめされてしまいます。
妻と会話しているとこのようなことが頻繁にあるのです。
私自身、言ったことは覚えているものの、細かな状況まで覚えていないからいけないのでしょうが、妻の記憶力の良さには舌を巻いてしまいます。
常にこんな調子ですから、妻と口喧嘩して勝てるわけはありません。
私の連戦連敗です。
しかし先日、こんな私にも勝機が訪れました。
それは食事をしている時のことでした。
妻が突然、大きなソファーを買いたいといい出したのです。
実は今のマンションに引っ越すとき、私も妻にソファーを買おうよと話していたのですが、「そんなもの買っても使わないし、邪魔になるだけでしょ!」と怒りながら拒否されていました。
もちろんその時もどれだけソファーがあると良いか、説明しようとしたのですが、顔を真っ赤にして拒否されたのです。
それに、いまさら大きなソファーをリビングに置こうとすると、リビングのレイアウトそのものを大きく変更しなくてはなりません。
おそらく…いや…間違いなくレイアウト変更は私の仕事となってしまうはずです。
妻の話を聞いた私は、「やった!チャンスだ!」と思い、ここぞとばかりに「以前私がその話をしたら、怒りながらダメっていったじゃない」といい返してやりました。
ほら、どうだと思っていると、妻は真顔で「私、女の子だから…」、
「女心と秋の空っていうでしょ」、
「女心は変わりやすいのよ」といわれてしまいました。
こんな風にいわれてしまうと、私はこれ以上何もいい返すことができません。
「そっか…」と返事するのが精一杯でした…。
連敗はまだ続いていたのです…。
私の矛盾はしっかりと指摘しながらも、自分の言い分が変わった時には、女の子という私が絶対に反論できない究極の理由を持ち出してくる…。
なんと抜け目がないのでしょう…。
私はこんな頭のいい妻が大好きです…。