episode59ハウス
相変わらずペットブームは続いているようです。
特に最近は猫がブームになっているようで、昔は犬を飼っていたのに、今は猫を飼っているという人もいます。
私はどちらかというと犬派なのですが、これまで一度も飼ったことがありません。
子供の頃から犬を飼いたかったのですが、両親が金魚や小鳥しか許してくれませんでした。
私たち夫婦が以前住んでいた戸建てはペット可でしたが、仕事が忙しく、ペットを飼うという発想が出てきませんでした。
仕事が落ち着いていた時、犬を飼いたかったことを思い出し、色んな犬種について調べ、小型犬について書かれた書籍も購入して読みました。
でも妻が賛成してくれないと、とてもじゃないですが犬を飼うことなんてできません。
妻にそれとなく「犬を飼いたいなぁ…」っていうと、「家の外で飼うならね」との返事でした。
実は妻の実家では、妻が子供の頃、中型犬を飼っていたことがあったようです。
でも昔の話ですから、外の犬小屋で飼っていたようです。
今の時代、犬を外で飼う人は少なく、犬のためにも屋内飼育がほとんどでしょう。
そのことを妻に言うと、家の中に犬がいると毛が抜けるだろうし、嫌だってことでした。
私は何とか妻を説得したく、毛が抜けにくい犬種もいることも話しましたが、お許しは出ませんでした。
ただ私が犬のことを何度も話していたせいか、妻も犬を飼うことに多少の興味が出てきたようで、しつけのことや食事のこと、費用のことなど、それとなく聞いてくるようになりました。
特にしつけの方法で、自分のスペースであるケージに入るようにするには「ハウス」っていうなど、犬に何らかの行動を促すときにはシンプルで、なおかついつも同じ言葉を使うということに納得していたようです。
妻と時々そんな会話をしていたある日のことです。
仕事のことについて、ちょっとした言い合いになってしまいました。
私は一生懸命考えていることを説明しようとするのですが、妻は取り合ってくれません。
私が話すうち、妻の目に怒りが混じってきたことは感じていたのですが、話を途中で止めると余計おかしなことになってしまいます。
でもこれ以上続けると、また妻が怒ってしまうかもしれません。
まずい…と思った瞬間、妻が私の部屋を指さしながら「ハウス!」といったのです。
私が驚いていると、また「ハウス!」と命令口調で繰り返しました。
私はすぐに話を止め、すごすごと自分の部屋に戻りました。
私はこのこと以来、犬を飼う話はしなくなり今に至ります。
私にわかりやすく、簡潔に指示を与えてくれる…
こんな妻が大好きです…。